アメリカのWiMaxについて、現在判っていること。


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このサイトには検索エンジンで「WiMax」をキーワードに到達する人が毎日何人か居ます。

ここで、アメリカのWiMaxの今後について、今現在発表されていることを、書きます。

その前に、アメリカのWiMaxは、Sprint社が54%株主であるClear(Clearwire)社が基地局などのインフラを設営し、そのインフラをSprintが販売(MVNO)しています。
Clearは自社でも直接エンドユーザーへWiMaxモバイルルーター接続サービスを行っていますが、Clearの収入の90%以上はSprintからの回線使用料です。
したがって、SprintがWiMaxサービスの販売を中止すると、Clearの経営は維持できなくなります。
 
 

さて、WiMaxに付いて現在発表されていることは、

● 2011年10月7日、Sprintは投資家・アナリスト向けwebcast会見を開き、同社のLTE導入計画について発表しました。この中で、SprintはWiMax対応携帯端末の発売を、2012年末までとすることを明白に発表しました。
SprintのLTE計画が、明らかにされる。アメリカのWiMaxの終焉が近い。 – 2011年10月8日

● 2011年12月1日、Sprintとの契約更新が締結できずに破産宣言の危機に追い込まれたClearが、周囲の圧力にも影響されたと見られるSprintと、契約更新をようやく締結。Clearは契約料の一部をSprintから即日受け取りました。
Clearはこの日の午後5時までに会社債の利息の支払いを迫られていましたが、この締め切り直前の契約更新締結で、その債務を果たすことが出来ました。
この契約更新の中には、「Sprintが2015年末までClearのWiMax回線を使用し、使用料を支払う」ことが定められています。
Sprint, Clearwire Extend Contract – 2011年12月2日

2011年10月7日の発表で「WiMax端末は2012年末まで発売継続。」(その後は、特に状況が変わらない限り、販売中止と予想される。)」なのにClearとの契約は2015年末まであるのは、WiMax端末を消費者と契約する際には2年契約となる為、「最後の契約者が2年契約、プラス、2年契約が終了しててから機種変更まで余裕1年」を考慮し、SprintとClearのWiMax回線利用契約は、2012年末から3年後の2015年末までとなっています。(つまり、Sprintによる2016年からのWiMax回線利用契約は、今のところありません。)

● 2012年1月10~13日のラスベガスでのCES(Consumer Electronics Show)で、Sprint上級副社長のDavid Owens氏は、「Sprintは、今後、WiMaxの新機種端末は開発(発売)しない。」と明言しています。
CES 2012 – Sprint done selling WiMAX phones, Windows Phone needs to build enthusiasm – 2012年1月14日
他多数。
つまり、SprintからWiMax対応の新機種はこれから先は出て来ません。

● Clearは自社のウェブページでの新規ユーザー勧誘ページから2年契約プランを削除し、「いつでも止められる」month-to-month (および、プリペイド短期)プランしか、現在は販売していません。
Clear Service Plans

● Clearは現在アメリカ国内で78都市でWiMaxサービスを提供しています。(比較のために書くと、Verizonは現在約200都市で既にLTEサービスを開始しています。)
人口カバー率では、1億3000万人で、アメリカ全人口の42%程度です。
Clearは全資金をTD-LTE導入に投入している為、これ以上のWiMaxサービスエリアの拡張の予定はありません。

なお、SprintもClearも4Gは LTEおよびTD-LTEの導入準備を進めており、Sprintは今年(2012年)3~6月にLTE(FD-LTE)を、Clearは2013年6月にはTD-LTEのサービス開始予定を発表しています。
 
 

以上が公表されている事実です。

少なくとも2015年12月31日23時59分まではWiMaxの電波は全米78都市の上空にのみ、飛び続けることでしょう。

その後については、Sprintが2012年中ごろまでに最初のLTE導入を開始し、2013年末ごろまでに殆どのSprintマーケットでLTEサービスを導入するか、それが見えてきた時点で、詳しく発表されると思います。

「代替新モデルを市場導入せずに、旧モデル廃止を発表する」のは、企業PRとしては最悪です。
代替新モデル(LTE)がちゃんと稼動を始め、それなりにユーザーに普及し始めて、初めて「旧モデル(WiMax)へのサポートは、20xx年xx月xx日で終了します。」という案内が正式にSprintからあるのが、当然です。

・・・しかし、普通に考えたら、WiMaxがいつ、どうなるかは、証券会社の担当アナリストでなくとも、予想は付くと思いますが。

ところで、Clearは今日現在数10億ドルの単位で多額の会社債を発行し、会社設立以来一度も黒字になった期は無く、かつ、追加投資が無いと2012年末には会社経営を停止しざるを得なくなるであろうと言われています。それにもかかわらず、昨年3月から何度も「倒産・会社再建法適用直前」と言われながら生き残っているのには理由があります。Clearが現在保有している電波使用権(主に2.5GHz)を今、他社に売却しようとすると、50~70億ドル以上の価値があるそうです。
つまり、Clearwireには現金は無いけど、電波使用権と言う資産がある。
だから、会社が潰れても、その電波使用権を売れば、債権者は大きな損をしない。
だから、「こんな儲かっていない会社に、何億ドルも投資する投資グループがいるのか?」と思うのに、いつも、危機になるとだれか助けてくれる投資グループが出てくるのですね。
Spectrum Crunch Makes Clearwire (CLWR) Shares Attractive – 2012年2月23日



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