SprintとT-Mobile USは2015年中頃予定の600MHz周波数入札を、合弁会社を設立して行う予定?


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Bloomber誌とWall Street Journalは、昨日と今日、標題の件を報道しています。
【Bloomberg】Sprint Planning for Lengthy Review of T-Mobile Deal – 2014年7月15日
【Wall Street Journal】Sprint, T-Mobile Look to Raise $10 Billion for Spectrum Auction – 2014年7月15日 (有料メンバー用記事)
【Bloomberg】Sprint, T-Mobile Airwave Bid Seen Building Case for Merger – 2014年7月16日

まず、事の背景はと言うと、
1.FCCは来年2015年中ごろ、600MHz周波数帯域の競売を行います。この周波数は、ディジタルTVに移行したことによって使用しなくなった、旧アナログTVの使用周波数です。
2.SprintもT-Mobile USも、サブ1GHz(周波数1GHz以下)の周波数保有は少なく、Sprintが800MHzを全体の利用可能なサブ1GHz帯域の10%、T-Mobile USは今年Verizonから買い取った700MHz Band 12を4.5%所有しているだけです。これに対して、AT&Tは38%、Verizonは34%を所有しています。低周波数電波はビル内への電波透過率も高く、長い(遠い)距離まで到達できるために基地局の設置数も少なくて済みます。SprintもT-Mobile USも、低周波数使用権の獲得はAT&TとVerizonと対等に競争するためには戦略的にも大事なポイントです。
3.600MHz周波数が「制限無し」の競売になると、資金力のあるAT&TやVerizonが入札に有利になり、多くの地域とサブ周波数帯域を勝ち取るであろう、と予想されています。そこでSprintはFCCに対し、「既に電波特性で有利な低周波数使用権を多く所有しているAT&TとVerizonに対して入札制限を加えたり、一部のサブ周波数帯域の入札から排除し、『2大キャリア以外』が落札しやすい条件を追加するように求めていましたが、FCCは2014年5月の委員会投票でSprintの提示条件をすべては受け入れず、妥協案を可決していました。

さて、現在、T-Mobile USは、Verizonから今年初めに買い取った(FCC認可は4月)700MHz Block A(Band 12、5MHz+5MHz帯域)の周波数を、さらに全米規模を地域的にカバーするために、他の700MHz Block A(Band 12)使用権を所有している地域携帯会社などと交渉を始めているというニュースが漏れており、T-Mobile USもこの事実を認めています。すべて買収すると、20数億ドルの費用がかかると予想されています。T-Mobile USは、Sprintとの合併が規制当局に認可されなかった場合には、この700MHz Block A(Band 12)を基盤に低周波数LTEを築いていく計画です。

もうひとつの背景は、
4.Sprint(ソフトバンク)は、T-Mobile US買収の発表を行った後、規制当局の審査に12ヶ月~18ヶ月、または、それ以上の期間がかかると予想しているようです。
2011年にAT&TがT-Mobile US買収を提案したときには、2011年3月20日に買収を発表し、規制当局の認可が降りないことが明らかになったため、2011年12月19日に買収を諦めています。その間、9ヶ月掛かっています。
ソフトバンクがSprintを買収した際には、2012年10月14日にソフトバンクは買収を発表し、2013年7月10日に買収手続き完了しており、10ヶ月掛かっています。
つまり、もし、来月(2014年)8月以降にSprint/ソフトバンクがT-Mobile US買収提案を正式に発表した場合には、2015年中ごろに行われる600MHz周波数帯域の競売にはまだ買収が完了していないか、完了直後で、入札準備と資金調達が難しい可能性が高い。

そこでSprintとT-Mobile US(・・・というか、主にSprint側でしょうが・・・)は、600MHz周波数帯域競売への入札のために合弁会社を作り、合併手続きとは関係無く入札に望もう、という目論見のようです。
「合弁会社を設立して入札に臨む」という話が出ているということは、Sprint/ソフトバンク側としては、既に「T-Mobile US買収提案を発表する事」は『ほぼ』決定事項である、と考えていることを意味するでしょう。 あとは、発表のタイミングの問題だけでしょう。

もうひとつの目的は、SprintとT-Mobile USが合同で活動する既成事実を作ることで、政府規制当局が認可せざるを得ないような状況を作ってしまおう、という企みあるのではないか、とBloombergは解析しています。

合弁会社は100億ドルを入札資金として調達する予定で、この資金は既にうわさが出ている「日米8金融機関による、約400億ドルのSprintによるT-Mobile US買収資金準備」から捻出されるようです。

合併が認可された場合、新会社は取得した600MHz帯域を低周波数LTEの中核として使用しますが、TD-LTEで使用している高周波数帯域(2.5GHz、Band 41)では逆に他社よりもかなり幅広く電波使用権を持っているSprintは一部の周波数を資産譲渡することが合併の条件となると予想されており、結果的には使用権譲渡による収入と、入札金額は、相殺する可能性があります。

また、合併が認可されなかった場合には、中立である合弁会社で得た600MHz周波数使用権は、必要に応じてSprintとT-Mobile USに分割して転売されることになるでしょう。



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